学校運営責任者
ウォルター・ペーニャ
2011年3月11日、東日本大震災が日本を襲いました。その日は登校日で、YIS のキャンパスには大勢の生徒や教職員がいました。現在の在校生でその日 YIS にいて震災を経験した人はいません。現在、私たちは新しいキャンパスで、新たな世代の生徒、ご家族、教職員とともに学校生活を送っています。ですが、私たちのコミュニティには、あの午後のことを今も鮮明に記憶している人たちがいます。
その人たちは、あの日、誰もが生徒を最優先して行動したことを覚えています。学校では、事前に計画された緊急時対応手順の訓練は行われていませんでしたが、人々は支援が必要なところならどこへでも駆けつけました。旧キャンパス周辺にお住まいのご家庭の中には、自宅を提供し、帰宅できなくなった生徒たちを受け入れてくださる方々もあり、教職員も生徒たちに寄り添いながら、互いに支え合いました。私たちのコミュニティには、当時のエピソードがたくさんあり、それらはコミュニティ全体で共有する記憶として残っています。これについては、また別の記事でご紹介させていただきたいと思っていますが、こうした経験は、9月1日に私たちが実施した訓練について理解するうえで、重要な意味を持っています。
日本では、1923年の関東大震災にちなみ、9月1日は「防災の日」と定められています。YISでは、生徒たちがこの日を「ディザスター・デー(災害の日)」と呼ぶことを決めました。
YIS の「ディザスター・デー」は、一夜にして実現したわけではありません。準備は何カ月も前から始まっていました。学校と連携して準備を進めてくださった横浜市消防局は、「防災フェア」に職員と機材を快く提供してくださった他、リーダーシップ・チームと調整したテーマや内容に基づき、事前に翻訳された資料を用いて、中・高等部の生徒向けの説明会も実施してくださいました。
さらに、訓練内容やスケジュールの確認、機材、非常用物資、連絡手段の準備も行いました。ですが、もうひとつ、訓練しなければならないことがありました。それは、普段どおりの生活ができなくなった際に、私たちがひとつのコミュニティとしてどのように協力し合うのか、ということです。
そして、「防災の日」当日がやってきました。
初等部の児童たちは、起震車や煙体験ハウスで体験を行い、消防車を見学し、消化器の使い方を学び、中・高等部の生徒たちは消防局による説明会に参加しました。また、全校で、火災、地震、津波発生時の避難訓練、および垂直避難の訓練も実施しました。
生徒と教職員は、緊急事態発生時には何をすべきか、どこへ避難すべきかを練習し、教職員は緊急時の役割につく訓練を行い、保護者ボランティアの方々はフェアのお手伝いをしてくださいました。各訓練は、一連の手順、連絡体制、タイミング、そしてキャンパス内での移動を確認・検証する良い機会となりました。
そして、この日の最後に待っていたのが、一日の中で最大の挑戦ともいえる「緊急時引き渡し訓練」でした。YIS がコミュニティ全体でこの訓練を行うのは、2011年3月以来初めてのことだったため、今回の訓練はほとんどの人にとって初めての経験でした。今回、私たちは意図的に、アナログとテクノロジーを組み合わせた手順を用いることにしました。実際の緊急事態では、生徒の安全確保を最優先する手順の確立が必要だと考えているからです。当日は、約500名の保護者の方々がキャンパスに足を運び、訓練にご協力くださいました。学校全体では、教員、事務職員、補助スタッフ、警備員、ドラゴン・ダイニング、施設管理のパートナーを含む144名のYIS スタッフが訓練に参加しました。
正直に申し上げると、訓練開始前は、「ディザスター・デー」が、引き渡し訓練中に本物の「ディザスター(大混乱)」になってしまうのではないかと心配していました。何百人もの方々に、まったく新しい手順に沿って行動してもらうようお願いしていたのですから! ですが、実際には、コミュニティの皆様が非常に連携のとれた姿勢で訓練に臨んでくださったおかげで、スムーズに訓練を行うことができました。
今回の訓練は午後3時に始まり、午後4時25分に正式に終了しましたが、その時点で迎えを待つ生徒はわずか数名にとどまりました。今回の訓練から、改善すべき手順や、皆様からのご意見をもとに細部を調整する必要があることが分かり、多くの教訓を得ることができました。これこそが、私たちが訓練を行う理由です。
防災は、単に備品を揃えることではありません。非常用物資や通信手段、手順の維持・点検も必要ですが、学校全体としてどのように対応するかを訓練することも必要です。そして、その練習をするために、また15年も待つ必要はないのです。今回のような訓練を、今後またいつ、どのように実施するかについては現在話し合っているところですが、緊急時訓練は今年度を通して継続して実施していく予定です。
防災は、生徒たちが学校を出たら終わりではありません。「ディザスター・デー」をきっかけに、是非ご家庭でも防災について話し合う機会を持っていただければと思います。もし子供たちが学校にいるときに大地震が起きたら、家族としてどのように対応しますか? 携帯電話が使えなくなったら、どのように連絡を取り合いますか? 誰が子供たちを迎えに行きますか? 帰宅できない場合は、どこで集合しますか?
今回の訓練の実現にあたりご協力いただいた生徒およびご家族の皆様、保護者ボランティアの方々、教職員、消防局、その他すべての関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。皆様の忍耐、ご理解、ご意見、そして何よりも多大なるご支援に深く感謝申し上げます。
YIS コミュニティのメンバーは、2011年に実際の緊急事態が発生した際、多くの人々が支援に駆けつけ、生徒を最優先して行動したことを覚えています。今日、状況こそ異なりますが、この姿勢には今も変わりありません。コミュニティとして互いを支え合い、共に困難を乗り越える力は、これからも引き続き育んでいくことができます。次の緊急事態がどのようなものになるのかは、はっきりとは分かりません。私たちにできることは、その時に備え、訓練を行い、学び、共に話し合い続けることです。
皆様のご意見は、このプロセスを進めていく上でとても重要です。引き続き、ご意見をお寄せいただければ幸いです。